仏の精神科医が来日講演
職場で人格や尊厳を傷つける精神的な暴力「モラル・ハラスメント」をなくそうと活動しているフランスの精神科医、マリー=フランス・イルゴイエンヌさん(57)が来日、東京と大阪で講演した。企業の予防計画作成や従業員に正しい知識をもってもらうことが必要と訴えた。
イルゴイエンヌさんはモラル・ハラスメントについて「冷たく陰険で、ひそかに進行する精神的な暴力。何度も繰り返され、人の尊厳や心身を傷つけ、職場の雰囲気を悪化させます」と説明した。
加害行為には
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「発生しやすい職場は役所や医療、福祉、教育係など、奉仕的な職業が多い」と話す。
被害者は女性や50代以上が目立つという。
放置すると、被害者側の仕事の効率が下がり、欠勤やうつ病、自殺者が出る恐れがあり、「経営にも大きな損害を与える」と警告する。予防計画や管理職研修の実施、従業員への情報提供が必要だと訴えた。
イルゴイエンヌさんは98年に「モラル・ハラスメント 人を傷つけずにはいられない」 (紀伊国屋書店)を出版。「精神的な」 「道徳的な」という意味を込め「モラル・ハラスメント」と定義した。その後、フランスやフィンランドなどで職場のモラハラ規制の法制化が進んだ。
モラハラの背景は「職場のプレッシャーや競争が激しく、人が道具のように扱われていることや、IT化で意思疎通が疎遠になっていることがあるのでは」と分析する。
79年に精神科医として開業。職場や家庭内のモラハラ被害者から多くの相談を受けた。印象に残るのは、妻が相談してきた自動車部品メーカーの営業職の50代男性。若い上司から過酷なノルマを与えられた上、「年寄りとは仕事をしたくない」などと侮辱を受け、自殺した。「裁判では自殺とモラハラの因果関係が認められ、法制化への機運が高まった」と振り返る。
著書には何千通も感想が寄せられた。「だれでも被害者になりうると同時に、加害者にもなりうることを認識し、予防に努めてほしい」と訴えた。
2006年3月6日「朝日新聞」より
