「不定愁訴」の陰に疑いあり

 原因不明で体調不良を訴える「不定愁訴」の陰にうつ病の疑いあり−。製薬会社グラクソ・スミスクライン(東京)が昨年実施した
インターネットによるアンケートでそんな結果が分かった。調査では、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬を内科などで処方され、一カ月
以上服用している患者429人の3割にうつ症状があった。

 調査対象は、うつ病の治療を受けておらず、自律神経失調症や不眠症、パニック障害、神経症などにより抗不安薬を一カ月以上服用
していた患者たち。患者に精神疾患を診断する質問をしたところ、うつ病の基準に達した人が全体の8.8%にあたる38人、基準は満たさないがうつ状態と考えられる人が20.0%の86人いた。

 また、服用期間は6〜9年との回答が21.9%と最も多く、三人に一人が五年以上だった。平均でも4.2年で、服用が長期化していることが分かった。服用をやめた人のうち、半数は「不安になった」 「イライラした」「気分が落ち込んだ」などと回答した。

 ベンゾジアゼピン系は効果が高く、重い副作用が少ないため多用されているが、認知機能の悪化や依存性などのリスクがあるとの指摘もある。

 不定愁訴患者にうつ病の可能性があるとの結果について、東邦大医学部心身医学講座の坪井康次教授は「うつ病だと気づかず、対症療法として抗不安薬が処方されている実態が浮き彫りになった。ベンゾジアゼピン系に抗うつ作用はほとんどなく、根本的なうつの治療にならない。不定愁訴患者の診察では、うつ病も念頭に置く必要がありそうだ」と指摘する。

 同社も「うつが重症化すると治療が難しい。早期発見のために、うつ病の可能性を医師に伝えることが大切」と話している。
2006年5月26日「中日新聞より


不定愁訴とは
 体のどこが悪いのかはっきりしない訴えで、医学的身体的検査をしてもどこが悪いのかはっきりしないものをいいます。例えば全身倦怠、疲労感、微熱感、頭重、頭痛、のぼせ、耳鳴り、しびれ感、動悸、四肢冷感などの症状が持続的あるいは現れたり消えたりする自覚的な症状。自律神経失調症や更年期障害、その他いわゆる心身症の症状として現れることもあります。

ベンゾジアゼピン
 不安や興奮などを抑制する働きを持つ物質です。不安や興奮を抑制することで眠気を誘うため不眠の薬としても利用されています。
 ベンゾジアゼピン系の抗不安薬には、ソラナックス、コンスタン、セルシン、ホリゾン、メイラックス、ワイパックス、レキソタンなどがあります。
 ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には、ハルシオン、レンドルミン、エバミール、ロラメットなどがあります。



 ベンゾジアゼピン系のお薬を長期に使用していて症状に改善が見られない場合は、
主治医の先生または専門科にご相談してみるのもいいのかもしれません。