支援、治療法に道

 自閉症の障害がある人の脳内で、感情などをつかさどるセロトニン神経細胞などの機能異常が起きていることを、浜松医科大の森則夫教授や中村和彦准教授らのグループが世界で初めて確認し、五日何の米国医学雑誌に発表した。自閉症とセロトニンの関係は、研究者の間では以前から指摘されていたが、これまで具体的に確認されていなかった。

 浜松医科大グループ「機能異常と確認」

 研究に協力したのは、NPO法人アスペ・エルデの会(名古屋市西区)に所属する自閉症の18〜26歳の20人。いずれも大学生や大学院生、会社員として社会生活を送っており、障害の程度は比較的軽いという。

 研究では、二種類の脳内物質に付着する特殊な物質を静脈に投与し、PET(陽電子放射断層撮影装置)で脳内を測定。測定結果を、障害のない男性20人と比較した。

 自閉症の人たちは障害のない人に比べ、セロトニン神経細胞内のトランスポーターと呼ばれるタンパク質が脳全体で平均30%低下していた。知覚をつかさどる視床という脳部位でセロトニン神経細胞の働きが弱まると、「こだわり」症状が強まるなどの特徴があった。

 逆に、前頭葉眼窟面という感情に関係した脳部位では、自閉症の人はドーパミン神経細胞のトランスポーターが増加。ドーパミンの働きが活発になると攻撃性が高まるとされ、自閉症と関係していると指摘する。

 森教授は「自閉症は脳機能の障害であることを目に見える形で明らかにできた。支援や治療法の開発に役立てることができるのではないか」と話す。
参照:2010年1月6日(水)「中日新聞」